【2024年1月施行】生前贈与の概要とメリット|法改正のポイントを詳しく解説
生前贈与は、家族の財産を効率よく受け継ぎ、遺産相続トラブルを防ぐうえでも上手く活用したい制度です。節税効果が得られることもあります。
今回は、生前贈与の定義やメリットを確認したうえで、2024年1月1日から施行となった制度改正内容のポイントを解説します。生前贈与に興味がある人は、ぜひ記事を読んでみてください。
INDEX
生前贈与とは
生前贈与とは、その名のとおり被相続人の生前(存命中)に遺産を誰かに分け与えることです。ここでは、生前贈与の定義や特徴を詳しく見ていきましょう。
民法における贈与の性質
生前贈与を知るうえでまず理解しておきたいのが、民法が定める贈与の性質です。民法549条と民法550条では、贈与について以下のように定めています。
【民法第549条】:贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
【民法550条】:書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
たとえば、父親が息子に土地と家屋を与える意思を示し、それを息子が受諾すれば、贈与の効力が生じることになります。また、贈与の場合、いわゆる契約書や遺言書がなくても、双方の合意があれば成立可能です。
相続税が課せられる「みなし贈与」
ここまで紹介した贈与(生前贈与)の場合、その多くは当人たちに「私たちは生前贈与を行った」という認識があり、制度に則って贈与税の支払いが行われるのが一般的です。これに対して贈与行為を行った当人たちにその認識がない場合、相続税の支払いも当然のことながら行われない可能性が高まります。
国税庁ではこうした納税逃れの問題を鑑み、実質的に贈与となっている場合や、相手に経済的利益が生じた場合、社会通念上著しく低い価格で取引された場合などに、「みなし贈与」として贈与税の支払いを課すことがあります。
たとえば、時価100万円のものを5万円で譲渡した場合、無償ではないことから民法上は贈与になりません。しかし、譲渡を受けた側は95万円分もの得をしているため、相続税法の観点ではこのやり取りを「みなし贈与」として課税することがあります。
具体的な判断は、税務調査を行う税務署によって異なります。生前贈与やみなし贈与にあたるかどうかの判断がつかない場合は、早めに税務署に確認したほうがよいでしょう。
遺産相続でよく起こるトラブルについて「遺産相続でよく起こる6つのトラブル事例|相続トラブルを防ぐ2つの対策も紹介」の記事で紹介しているので、ぜひご覧ください。
生前贈与を行うメリット
生前贈与には、以下2つの効果・メリットがあります。
暦年贈与制度の活用で相続税を節税できる
生前贈与が注目される最大の理由は、やり方によっては相続税の節税が可能になるからです。
まず、通常の遺産相続の場合、被相続人が亡くなることで相続手続きが一気に動くことになります。それはつまり、被相続人が持つたくさんの遺産に対して多くの相続税が一気にかかるリスクがあるということです。
これに対して贈与には、1月1日から12月31日までの1年間で贈与額が110万円以内であれば非課税になるという「暦年贈与の制度」があります。また、この暦年贈与における110万円の非課税枠は、贈与を受ける側を基準として計算する仕組みです。
たとえば、父親である被相続人に7人の子どもがいる場合、それぞれに110万円ずつで年間770万円の贈与を非課税で行うことも可能となります。
贈与の相手が少数の場合も、10年や20年といった長い時間をかけて年間110万円の贈与を繰り返せば、相続財産総額をかなり圧縮できるはずです。
家族・親族以外にも行える
贈与の場合、先述の民法549条が示すとおり、両者の関係にルールがありません。そのため生前贈与は、法定相続人や親族以外の他人にもできるものとなります。
遺産相続の場合、遺言書があれば法定相続人ではない内縁の妻などにも相続ができますが、それが贈与であれば他人に財産を与える際の書面が不要です。
【2024年1月施行】相続税および贈与税の改正ポイント
冒頭でも触れたとおり、2024年1月1日から贈与税および相続税の法律が改正され、生前贈与をする際のポイントにも大幅な変更が生じています。詳しく見ていきましょう。
暦年贈与の生前贈与加算対象期間が3年から7年に
実のところ先述の暦年贈与には、生前贈与加算対象期間が設けられています。生前贈与加算対象期間とは、相続の発生日から遡り贈与を受けた資産を相続財産に含める形で相続税を計算する期間のことです。
たとえば、従来の制度では、年間110万円の贈与を被相続人が亡くなるまで10年間続けた場合、生前贈与加算対象期間である3年間の330万円(110万円×3年)は相続財産として相続税の課税対象になる仕組みでした。
2024年1月1日以降は、これまで3年だった生前贈与加算対象期間が段階的に引き上げられて2031年には7年になります。
暦年贈与で多くの節税効果を得るためには、被相続人が若く元気なうちに早めの生前贈与を始めることがこれまで以上に重要となります。
相続時精算課税制度にも基礎控除110万円
生前贈与には、相続時精算課税という制度もあります。相続時精算課税制度とは、早期にまとまった資金が必要な子や孫が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができるとともに、贈与者である被相続人が亡くなったときに贈与財産の「贈与時の価額」と「相続財産の価額」との合計金額から相続税額を計算し、一括で相続税として納税する制度のことです。
相続時精算課税制度を利用する際には、申告のタイミングで相続時精算課税選択届出書の提出が求められます。
2024年1月1日からは、相続時精算課税制度にも暦年贈与と同様に年間110万円の基礎控除が創設されました。この110万円は、特別控除(2,500万円)の対象外です。相続発生時に相続財産に加算されることはありません。
生前贈与の注意点
贈与自体は、先ほども触れたとおり当人同士の合意があれば、契約書などの書面がなくても実行できてしまう手続きです。
ただし、たとえば親の口座から息子の口座に資金移動を行っているにも関わらず、贈与の事実を税務署に証明できない場合、生前贈与が否認されて多くの相続税が課せられてしまう可能性があります。
節税目的で生前贈与をする場合、税務署に認めてもらえるだけの「贈与の証拠」を残すことが必要です。
銀行などの金融機関では、贈与契約書のフォーマットを公開しています。参考にするとよいでしょう。
生前贈与の概要と法改正のポイントまとめ
生前贈与は、「相続税の節税をしたい場合」や「法定相続人以外に財産を譲りたい場合」などに活用しやすい制度です。ただ、2024年1月から制度内容が変わったことで、暦年贈与をする場合には早めの実施が必要になります。また、期待した節税効果を得るためには、税務署にきちんと承認してもらうための手続きが必要となるでしょう。
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