副業サラリーマンが個人事業主になる|期待できる節税効果や手続きのポイントを解説
近年では、日本政府が副業・兼業を推奨することで、サラリーマン(会社員)として会社勤めをしながら休日などに副業をする方々が多くなりました。こうしたなかで注目されているのが、副業をするサラリーマンが個人事業主になるということです。
今回は、副業サラリーマンが個人事業主になることの意味やメリット・注意点、基本的な手続きなどを紹介します。サラリーマン生活のなかで副業を実施・検討されている人は、ぜひ参考にしてください。
INDEX
副業サラリーマンでもなれる「個人事業主」とは
個人事業主とは、その名のとおり「個人」で「事業」を営む人の総称です。厳密には、株式会社などの法人設立を行わずに、個人事業を営むことを意味します。個人事業主になるためには、税務署で後述する届け出を行う必要があります。
個人事業主の意味や働き方は、サラリーマン(会社員)や近年注目されているフリーランスと比較するとわかりやすいです。
サラリーマンと個人事業主の違い
いわゆるサラリーマンと個人事業主の大きな違いは、会社に雇われているかどうかです。サラリーマンの場合、雇い主である勤務先企業から給料をもらいます。一方で個人事業主は、人を雇うことも可能です。
個人事業主の場合、仕事内容・働く時間・休みなども自分で決められます。収入アップしたい場合は、単価が高い仕事を選んだり作業時間を増やしたりなどの工夫を自由にすることも可能です。こうしたチャレンジをしても、上司などから「最近の工数が多すぎる」などと文句を言われることもありません。
個人事業主とフリーランスの違い
フリーランスとは、特定の会社などと雇用契約を結ぶことなく、独立して自由(フリー)に仕事を請け負う働き方の総称です。きちんとした定義のある法律用語などではありません。
フリーランスのなかには、税務署に届け出をして個人事業主になるほかに、法人設立をするなどさまざまな人が存在します。
「副業サラリーマンが個人事業主になる」とは?
副業サラリーマンが個人事業主になるとは、サラリーマンとして会社で雇用され続けるなかで、税務署に後述する届け出をして個人事業主の形で副業を行なうことです。会社員のままで個人事業主になる場合、国で定める制度のほかに勤務先企業のルールも意識した手続きが必要となります。
副業を長く続ける方法を「副業を長く続ける方法とは?途中でやめた人の理由から見える改善策も解説」の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
副業サラリーマンが個人事業主になるメリット
副業サラリーマンが個人事業主になることには、以下の効果・メリットがあります。
必要経費の計上が可能となる
たとえば、サラリーマンが空き家だった実家をリフォームして不動産賃貸の副業をする場合、個人事業主になると以下のような費用を必要経費として計上できるようになります。経費計上で事業所得が減ると、節税効果が得られやすくなるでしょう。
- 損害保険料
- リフォーム費用
- 管理費
- 交通費
- 消耗品費
- 租税公課
青色申告特別控除が使える
青色申告特別控除とは、青色申告という方法で確定申告をした人に対して、所得金額から55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)または10万円を控除する制度です。青色申告特別控除は、事業所得もしくは不動産所得が生じる事業(副業)をしている場合に利用できるものとなります。
たとえば、不動産投資の副業で年間100万円の所得があった場合、青色申告特別控除で55万円控除されると、100万円-55万円⇒45万円に税金がかかるイメージです。
副業が赤字の場合に損益通算できる
損益通算とは、同一年分の異なる収入源の利益と損失を相殺することです。
サラリーマンの給与所得は、通常は損益通算できません。ただ、サラリーマンが副業をすることで事業所得と給与所得の両方があり、事業所得に損失が出た場合、損益通算が適用可能となります。
副業を始めたばかりの時期に、準備などで多くの経費がかかる一方で利益があまり出ないことで赤字になってしまった場合、サラリーマンの給与・賞与と副業の赤字分を相殺できるこの仕組みは大きな魅力になるでしょう。
家族に支払った給料を経費にできる
たとえば、同居の配偶者や両親などのサラリーマン本人と生計を一にしている家族・親族に事業を手伝ってもらう場合、個人事業主になれば、一定の条件を満たしたときに青色事業専従者給与という制度を利用して、家族・親族に支払った給与を経費扱いできます。
生計を一にする親族・家族に給与を支払った場合に、必要経費として差し引く方法には、白色申告者が使える事業専従者控除額という仕組みもあります。
メリット | 内容 |
---|---|
必要経費の計上が可能 | 事業関連の費用を経費として計上でき、節税につながる |
青色申告特別控除が使える | 青色申告を行うと最大65万円の控除を受けられる |
副業が赤字の場合に損益通算できる | 副業の赤字を給与所得と相殺できる |
家族に支払った給料を経費にできる | 青色事業専従者給与を活用し、家族・親族への給与を経費として計上可能 |
副業サラリーマンが個人事業主になるための手続き
副業サラリーマンが個人事業主になるための届け出は、本人が「どこまでの制度利用を希望するか?」で変わります。ここでは、基本的な手続きの流れとポイントを簡単に紹介しましょう。
副業サラリーマンが個人事業主になるための必要書類
副業サラリーマンが個人事業主になるためには、事業開始から1ヵ月以内に税務署への開業届の提出が必要です。ただ、先述の青色事業専従者給与を中心とする各種税制を利用する場合は、以下のような書類の提出も必要となります。
- 青色事業専従者給与に関する届出・変更届出
- 源泉所得税納期の特例の承認に関する申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 適格請求書発行事業者登録申請書
確定申告に向けた準備
本業以外の部分(副業)で20万円を超える所得があった場合、確定申告をすることになります。個人事業主の確定申告におけるポイントは、事業用と生活用のお金を分けて管理したほうが効率的だということです。そのためには、以下も準備する必要があります。
- 事業用の銀行口座
- 事業用のクレジットカード
- 会計ソフト
副業サラリーマンが個人事業主になる際の注意点
サラリーマンが副業を行い、なおかつ個人事業主になる場合、以下の点に注意する必要があります。
副業禁止の会社もある
サラリーマンが副業を始める場合、会社のルール(就業規則・雇用契約)に従うことが大切です。冒頭で触れたとおり、近年では政府が副業・兼業を推進することで、社員の副業を支援する企業も多くなっています。
ただ、その一方で未だに「副業禁止」とする企業が存在するのも事実です。また、「ここまではOKだけど、これとこれはNG」といったルールの会社もあります。
これから副業に挑戦し、個人事業主になろうと考えている場合は、自分の行動が会社の就業規則に違反していないかどうかのチェックが必要です。
失業保険が受けられなくなる
個人事業主として開業したサラリーマンは、本業の会社をやめても「無職」にならなくなります。無職にならなければ、失業保険をもらえない可能性が高いです。
したがって、副業の利益があまり出ていない時期に本業退職をする場合、「失業保険をもらうために無職になるのか?」もしくは「失業保険をもらわずに個人事業主として頑張るのか?」などをしっかり考えて行動する必要があります。
副業サラリーマンが個人事業主になる注意点やポイントのまとめ
サラリーマンとして会社勤めをする人が副業で効率よく利益を出すためには、個人事業主になることがおすすめです。ただし、個人事業主として多くの節税効果などを得るためには、さまざまな届け出や事務作業が必要となります。個人事業主になることに興味がある人は、本業の支障にならない範囲内で早めの準備や情報収集をしてみてください。
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